24話)



 映画館と、ショップが入り込んだ巨大モール街に、車が入ってゆく。
 駐車場に車を停めさせた歩は、さすがに運転手にここで待てとは言わない。
「3時頃に駐車場で待ち合わせをしよう。それまで適当に時間をつぶしてくれ。」
 と言って、運転手を喜ばせた。
 二人は映画館に直行して、何作か並んだポスターの前で戸惑う真理を見て、歩はクスクス笑う。
「見たい映画くらいないのかい?」
 問われて、真理は
「誘ったのは、歩さんじゃない。歩さんこそ見たいの、ないの?」
 聞き返すと、歩はとても嬉しそうな顔をした。
「それでこそ、マリちゃんだ。」
 言った瞬間。
 真理は眉をひそめた。
(それでこそ、マリちゃんって・・。)
 どっちのマリのつもりで、彼は言ってきたのだ?
 茉莉か?真理か?
 今度こそ、聞こうとして口を開けた時、
「初めての映画だ。これにしよう。」
 指差した映画の作品は・・・。